フォークリフト誘導システムにおけるCANの利用

最新のハイラック倉庫のフロアスペースは非常に高価であるため、スペースの節約は投資コストの大幅な削減になります。このため、倉庫の設計者は通路をできる限り狭く設計します。自動誘導システムを使用すると、フォークリフトの高速動作とラック間距離の縮小が可能です。自動誘導システムは、通路では手動ステアリングからステアリング制御を引き継ぎます。このアプリケーションの重要な特長の1つは、誘導システムの自動セルフモニタリングによるドライバとフォークリフトの安全性確保です。

磁気検知型誘導システム

磁気検知型誘導システムでは、定められたアンペアと周波数を持つ電流を床に埋め込まれた誘導用ワイヤーに流します。システムはアンテナでワイヤーの周りの磁場を測定し、信号の強度と磁場の方向から、誘導用ワイヤーに対する位置を特定することができます。その後、ステアリングコントローラでステアリングシステムの設定点を計算します。誘導用ワイヤーからのフォークリフトのずれを同時に監視することで、緊急停止が可能になっています。
磁気検知型誘導システムは、光学式のソリューションと比較すると、過酷な環境や見通しの悪い環境で有利です。正確に埋め込まれた誘導用ワイヤーを使用すると、ちり、ほこり、雪、氷、平坦でない床、急勾配の床などの影響を受けずに誘導することができます。この磁気検知型誘導システムは±1mmの分解能に対応しており、狭い通路におけるフォークリフト使用に最適な精度の高いソリューションです。選択的な誘導情報を使用するシステムと異なり、磁気検知型ソリューションは信号情報を継続的に記録するため、必要なすべての情報が伝達されます。このため、必要に応じて、リアルタイム距離測定、方向の修正、および緊急停止を行うことができます。前方および後方にアンテナを備えているため、どちらの方向にも誘導できます。
通常運転時にドライバは補助付きステアリングシステムを使用してフォークリフトを制御できます。狭い通路では、自動誘導システムがフォークリフトを制御します。手動制御から自動制御への移行(フィードインと呼ぶ)は特に興味深いものです。通路に入る際の移行時間や必要スペースは、作業時間やフロアスペースを最小限に抑えるために、できる限り小さくする必要があります。

強化されたシステム

このフォークリフトの磁気検知型誘導システムでは、次の改良が図られています。

  • デジタルおよびデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor: DSP)テクノロジを使用して、アンテナと誘導用ワイヤー(100mAの誘導用ワイヤー電流)間の500mm以上の距離を検知
  • アンテナコイルの配置による最大70°のフィードイン角
  • 場所の条件に合わせて柔軟に調整できるフィードイン曲線
  • 最大2.5km/hのフィードイン

4コイルアンテナを使用することで、DSPで処理される誘導用ワイヤーの磁場の垂直成分と水平成分の検出が可能です。
コイル信号は調整可能な周波数でフィルタリングされて検査されます。フィードインプロセスが終了したら、誘導用ワイヤーの電流を制御できます。距離情報は内蔵のCANネットワーク上でアナログ電圧信号として使用できます。
電子機器(冗長用のDSPを含む)とコイルは30mm × 40mm × 200mmのコンパクトな筐体に収められています。
ステアリングコントローラはアンテナ信号と車両パラメータからステアリング角の設定点を計算し、もう1つのCANインターフェイスを使用してCANネットワーク経由でステアリングシステムにデータを送信します。フィードイン時に、ステアリングコントローラは、誘導用ワイヤーとの距離情報、ステアリング角、および積算計情報を使用して、最適なフィードイン曲線を計算します。フィードイン制御では、最初に前方のアンテナで誘導用ワイヤーの信号を検知します。後方のアンテナで信号を受信した後は、両方のアンテナでフォークリフトを制御します。フィードイン曲線は用途に合わせて調整できます。誘導用ワイヤーとの最小フィードイン距離に到達すると、フィードインプロセスは終わりで、フォークリフトの速度が磁気検知型誘導システムで制限されることはなくなります。ステアリングコントローラはCANネットワーク内のCANopenスレーブとして機能します。ステアリングコントローラの補助機能として入力や出力を追加することもできます。

安全性要件

自動ステアリングには高い安全性が求められるため、システムは完全な冗長構成になっており、さらにセルフモニタリング機能を備えています。4コイルアンテナを使用することで、磁場内の障害の検出が可能となっています。また、ゆがんだ磁場に合わせてシステムを調整することもできます。アンテナの信号処理では2つのDSPが使用され、完全な冗長システムが形成されています。さらに、両方のDSPからのデータ転送も2つのチャネル(CANとアナログ信号)によって冗長化されています。CAN信号はデータの整合性を確保するために専用の技術を使用して送信されます。
ステアリングの設定点を処理する前に、ステアリングコントローラでアンテナの信号が常にチェックされます。また、もう一方のプロセッサでアンテナの信号とステアリング角の設定点がモニタリングされます。このフォークリフトは緊急停止用ラインを備えています。緊急停止用ラインはフォークリフトを停止する安全なセカンドパスになります。緊急停止用ラインはステアリングプロセッサと監視用プロセッサの両方で遮断することができます。
さらなる機能や安全性への要求は確実に増え続けています。この自動磁気検知型誘導システムは、過酷な環境においても、先進的で信頼性の高いソリューションを実現しています。

引用元: CANニュースレター(2007年3月)