アンダートンボートリフトにおけるDeviceNetの利用

チェシャー州ノースウイッチのウィーバー川の堤防にあるアンダートンボートリフトは英国の最後の運河時代の最も大きなモニュメントの1つで、「運河の大聖堂(Cathedral of the Canals)」として知られています。これは1875年に建造された世界初のボートリフトで、世界各地の他のボートリフトの原型になりました。このリフトはEdwin Clark氏によって設計され、ウィーバー川とトレント&マーシー運河間の貨物輸送を高速化する目的で1875年に建造されました。2つの水路間の50フィートの落差が運河に沿って塩を運ぶ荷船にとって常に問題になっていました。Clark氏の解決策は水力学による革命的な新システムを使用するものでした。このシステムでは、タンクまたはケーソン(潜函)が中央にある1つの水圧ピストンで支持されます。円筒間で流体媒体である「水」の流れを可能にする短い連結トンネルが構築されました。しかし、川の汚染によってピストンや遮水部の腐食がひどくなり、1906年にはリフトを閉鎖することになりました。この後で、リフトを電動式の機械操作に変更することが決まりました。リフトは1983年の定期保守作業で重大な腐食が見つかるまで、この方法で稼働し続けました。重大な腐食が発見されたことでリフトは閉鎖されることになりました。多くの人はこれで終わりだと考えていました。1998年に文化遺産宝くじ基金(Heritage Lottery Fund)への申請が通り、総額700万ポンドの復元費用のうち330万ポンドの費用が確保され、リフトを1875年の水力運転に復元することが決まりました。
Fairfield Control Systems社は電動システムの設計と設置を受注しました。元来の構造に新しい水力システムを統合し、旧式の門扉とくさびを最新の制御システムに統合するという難しい課題に取り組む必要がありました。元のシステムは水圧式で、2つのケーソンの水位差を利用して下降するケーソンの方が重くなるようになっていました。高い方の川にあるケーソンには、低い方の川にあるケーソンよりも150mm高い水位まで水路から水が取り込まれました。2つのピストンを結ぶ弁は手動で操作され、これによりケーソンの位置を変えることが可能でした。2つのケーソン間の圧力差を実現するために、圧媒体として鉱物油を使用する「完全ポンプ式」のシステムを導入する必要がありました。新しいシステムでは、2つのケーソンを同時に動かす「バランスモード」と各ケーソンを独立して動かす「分離モード」の2つの動作方式が設計されました。この新しいバランスモードでは、両方のケーソン水量は同じになります。このため、ケーソンのバランスが維持された状態で、一方から他方に鉱物油をポンプで送り込んで動作を行う必要があります。この動作は、最大で毎分1300リットルのフロー処理能力を持つ45kWの2つのメインポンプで実行されます。このフローの制御と加速は、Fairfield Controls社が設計したSカーブアルゴリズムで実現されます。システム内における自然漏れの解消やケーソン位置の維持には、18,5kWの小型パイロットポンプを使用できます。分離モードでケーソンを上昇させる際には、2つの90kW定容量型ポンプが必要になります。これらのポンプは、バランスモード稼働時に下降するシリンダによって通常供給される動力をもたらします。これは、「仮想ケーソン」と呼ぶこともできます。分離モードで下降する際には、メインポンプを使用してメインタンクに鉱物油を押し戻します。ピストンの位置測定は、「Cims」という非常に精度の高い位置測定システムで実現されます。ピストンには細かいギザギザが付いており、保護用の「Ceramax」コーティングで覆われています。シリンダの位置はギザギザの付いたピストンで発生する振動数(1cmごとに1024回の正確さを実現)で特定されます。Fairfield社は自社のノウハウを活用して標準外のパルス列に対応したインターフェイスカードを設計しました。このカードはシリンダ位置の精度を高める標準の高速エンコーダとのインターフェイスを提供します。この制御システムは、計器室に配置された6層のPLC制御のMCCパネルと、河川および水路エリアに配置された一連のI/Oシステムで構成されます。リフトの運用制御は構造そのものから離して設計されています。このため、メインのリフトオペレータは間もなく構築される100万ポンドの操作室から、Fairfield Controls社が提供するCCTV(Closed Circuit Television)と放送設備を利用して、リフトの順序を制御できます。門扉、くさび、および張水弁の操作は、ローカルパネル表示インターフェイスを使用してローカルオペレータが行います。PLCラックは、電源装置、CPU、および3つのDeviceNetネットワークスキャナカードで構成されています。3つのDeviceNetネットワークはすべてここに接続されています。PLCには3つのスキャナカードが搭載されています。これらは3つのネットワークとPLCを接続するインターフェイスとして使用されます。スキャナカードは左から右にネットワークA、B、Cの順に並んでいます。DeviceNet電源タップは24Vの直流電源を各ネットワークに提供します。このオープン式のタップは各ネットワークの終端ポイントにもなります。E3過負荷保護リレーは、従来のスタータ回路に見られる標準的な過負荷から保護します。E3過負荷保護リレーは多機能固体素子マイクロプロセッサベースの電子過負荷保護リレーで、かご形誘導電動機を1~2250アンペアの範囲内で保護します。E3過負荷はDeviceNetネットワークを介してPLCと情報をやり取りします。メインのPLCラックは、ラック、電源装置、CPU、および3つのDeviceNetスキャナカード(ネットワークごとに1つ)で構成されています。CPUは32KiBメモリを搭載したSLC5/05です。DeviceNetスキャナカードが3つあるため、PLCに3つのDeviceNetネットワークを接続できます。
このシステムは分散I/O方式に基づいており、メインPLCとDeviceNetネットワークを介してメインPLCに接続される複数のFlexノードで構成されます。Flex I/Oノードは従来型のラックマウントI/Oカードの機能を実行します。ただし、機器はI/Oポイント(Flexノード)とローカルにハード配線されており、データはこのネットワークを介してメインPLCに中継されます。Flexノードはそれぞれネットワーク上の固有アドレスを持っています。各スキャナカードには設定情報が含まれているため、ユニットを交換する場合には、設定情報をダウンロードしなおす必要があります。いずれかのネットワークにノードを追加する場合には、設定情報も変更する必要があります。スキャナカードの設定はRockwell(www.ab.com)のDeviceNet設定ソフトウェア(RSNetworx)を使用して実行します。通常の環境の場合、ネットワークの設定は必要ありません。
引用元: CANニュースレター(2002年4月)